牛になる事は必要(夏目漱石)
2021年丑年にちなんで、皆様に夏目漱石の言葉をお贈りいたします。
牛になる事はどうしても必要です。
われわれはとかく馬になりたがるが、牛にはなかなかなり切れないです。
あせっては不可(いけま)せん。頭を悪くしては不可(いけま)せん。
根気ずくでお出(い)でなさい。
うんうん死ぬまで押すのです。それだけです。
決して相手を拵(こしら)えてそれを押しちゃ不可(いけま)せん。
相手はいくらでも後から後からと出て来ます。
そうしてわれわれを悩ませます。
牛は超然として押していくのです。 (夏目漱石)
この文章は、夏目漱石が親しい人に宛てて書いた手紙の中から抜粋したものです。
私たちは、とかく馬のように早く進むことばかり考えてしまいます。
そんな中で牛のように生きるのは難しいことです。
漱石自身も、こんな文章を書いている自分でさえなかなか牛になりきれないとも書いています。
では、牛になるとはどういうことでしょう。
着実に一歩一歩、思考を停止させず、根気よく進みなさいということです。
行く手には、何かが、あるいは誰かが立ちふさがります。
それは架空の相手ではありません。
そんなものを頭の中で勝手に想定してはいけません。
私たちを悩ませるものは現実に後から後から出てきます。
それを焦らず、よく考えながら、悠々とした態度で立ち向かいなさい、ということです。
さすが、夏目漱石です。
百年前以上前の人でありながら、現代にも通じる心構えを語ってくれています。
さて、私たち数学塾ガウスが取り組むべき課題は、何と言っても数学です。
ひとつ皆さんに、2021年丑年にちなんだオリジナルの問題をお出ししましょう。
【問題】
牛が2021頭います。
それらの牛の2本の角それぞれに8匹のネズミが乗っています。
その全てのネズミに7匹のカタツムリと1匹のカマキリが乗っています。
そして全てのカタツムリの2本の角それぞれに44人のこびとが住んでいます。
さて、これら全ての生き物の合計数は?
(イラストはイメージです。)
カタツムリの上にこんなにたくさんのこびとが住めるのか、と思われるかもしれませんが、
これは「蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)の争い」という故事成語をイメージしたものです。
昔、荘子という人の書いたものにこんな話があります。
ある国の王様が隣の国を攻めるべきかどうかで悩んでいました。
そこである賢者がこんなたとえ話をしました。
カタツムリの左の角と右の角にそれぞれ国があって、お互いに領地を取り合って何万もの死者を出したというのです。
その話を聞いて王様はくだらない作り話だと言いましたが、賢者は、我々の国々の争いも広大な宇宙から見ればカタツムリの角の上での争いのようなものではありませんか、と言いました。
すると王様はなるほど、その通りだと感心しました。
というわけで「蝸牛角上の争い」とは、大局から見ると取るに足らない小さな事で争うことであり、冒頭の夏目漱石が推奨している態度とは正反対の態度です。
ちなみにカマキリについては、これも「蟷螂の斧」という故事成語からのイメージでした。
さて、上の問題は計算できたでしょうか。「2021」にちなんだ答えが出れば正解です。