分類①
キノコ学者とリンゴとミカン
数学では、最初に何を学ぶと思いますか?
足し算、それとも、自然数でしょうか。
実はどちらでもありません。その前に学ぶことがあるのです。
ヨーロッパの学者が、原始的な生活を営んでいる人々に、取材をしたことがあります。
そこで現地の人がキノコを採ってきて、ごちそうしてくれました。
しかしその学者は、不安になって「これ毒キノコと間違えてませんよね?」と言ってしまい、
叱られたそうです。
反省した学者は、現地のキノコ採り名人から、キノコの分類を教わりました。
1、無毒で美味しいキノコ・・・普段の食用
2、無毒で不味いキノコ・・・食料が少なくなってきたら食べる
3、有毒キノコ・・・食料が欠乏したとき、仕方なく食べる
4、猛毒キノコ・・・いかなる場合でも決して食べてはならない
ここで述べたいのは、文明人の傲慢さではありません。
反省や謙虚な気持ちは大切ですが、それだけの話ではなく、
どこにでも数学はあり、その出発点は「分類」にある、ということなのです。
小学校低学年の算数では、足し算の文章問題として、果物の例が出されることがあります。
「ミカンが3つと、リンゴが4つ、あわせていくつ?」
答えは「7つ」ですが、この問いに引っかかりを覚える人は、数学のセンスがあります。
「ミカンとリンゴは違うものなのに、どうしてあわせられるんですか?」
生徒がこういう質問をしてきたら、どう対応すべきでしょうか。
こうした質問は、数学の得意な教師ほど喜びます。
数学の本質を理解している人なら、きちんと対応できます。
「出題者の意図を読みなさい。これは3+4=?という計算を身近な例で示しているのです」という指導は、問題の解き方としては及第点ですが、理論的な説明にはなっていませんよね。
これ実は、「問題の出し方が間違っている」のです。
「ミカンが3つと、リンゴが4つ、くだものはあわせていくつ?」
このように修正すれば、「果物」の合計を問うていることが明確になります。
「リンゴ」と「ミカン」は別物ですが、どちらも「果物」に分類されますね。
数学の世界は、分類で成り立っています。
「1」と「2」は異なる数ですが、どちらも「自然数」です。
「2」と「7」は、どちらも素数ですが、「2」は偶数で、「7」は奇数です。
もしかしたら生徒は、純粋な疑問ではなく、意地悪な気持ちで質問しているかもしれません。
あるいは、理論的な説明が難しすぎて、理解できないかもしれません。
しかし、それでもいいのです。
大切なのは、きちんと理屈が存在するんだと、示してあげることです。