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カール・フリードリッヒ・ガウス

(1777-1855)

数学好きは「面倒くさがりや」?

小学校で「1から100までの100個の数をすべて足しなさい」という問題が出たら、

あなたはどのような計算をしますか?
1+2+3…+100と順番に足しますか?

たいへん面倒ですね。

18世紀末のドイツのある小学校で、先生がこの問題を出した時、

たいていの生徒は1+2+3…とこの計算に取り組み始めました。
ところが、ひとりの生徒が「はい、5050です」と即座に答えを出しました。正解です。

先生も他の生徒もびっくり。
この生徒こそが、後に数学者となるカール・フリードリッヒ・ガウスでした。

次の方法を使えば簡単に答えが出てきます。

1から100までを順序を逆にして2つ並べる。
  1   2     3 …
100  99  98 …
縦の2つを足すと101。それが100個あるので10100。
2つ並べたので、2で割ると5050。

頭のいい人は幼い頃から賢かった──そんなことを言うために、

この話を紹介したのではありません。
面倒なことに突き当たった時に、そのままやり続けるか、

それとも、もっと楽な方法を探すか。
道徳的には「面倒なことでも、がんばってやれ」と前者が推奨されますが、

数学では後者を選ぶのが重要です。


数学好きは、実のところ、こういう「面倒くさがりや」が多いのです。

​そして、楽な方法を探すことによって、結局誰よりも「働き者」になります。


 

好奇心が困難を突破させる

ゲームに熱中すると勉強ができなくなる、とよく言われます。
しかし、ゲームやクイズ・パズルに熱中するのは、悪いことではありません。

悪いのは睡眠不足になること。

答えをわからないままにしておくのは嫌だという感覚。
難しければ難しいほど面白いと思う気持ち。
物事をとことん極めたいという探求心・好奇心。

こうした感覚は学習への意欲とも共通しています。これらの感覚があれば、

勉強が苦にならないどころか、禁止してもやり続けるでしょう。

数学者の頭の中にしかないと思われた「虚数」を

目に見える形で表すことによって、数学は飛躍的な前進を遂げました。

数学だけでなく物理学など様々な方面でもガウスは大きな功績を果たしています。
磁力を表す単位としての「ガウス」も、このガウスにちなんでいます。
(ただ、現在は「テスラ」という単位が推奨されています。このテスラも人の名です。)

あなたのそばの意外なところに、ガウスはいるかもしれませんよ。

ここで問題です。

正十七角形は、定規とコンパスだけで作図することができるでしょうか?

正三角形や正四角形(正方形)の作図は簡単ですね。
正五角形は少々面倒ですが、やはり定規とコンパスだけで作図できます。

正七角形や正九角形は作図できません。
ガウスの時代には、正十六角形までは、作図できる形とできない形がわかっていました。

そんな中、十九歳のガウスの頭に、正十七角形が定規とコンパスだけで作図できる

ということがひらめきました。

作図方法は、ガウスのひらめきを元に、後の数学者が発明しました。

64手順もあり、面倒の極みです。
しかし、好奇心に突き動かされると、どんな面倒なことでもやりたくなるのです。

終わりのないゲームに取り憑かれた人──それが数学者であるとも言えるでしょう。

ガウスの業績──「ガウス平面」のすごさ

最後に、ガウスの業績の中で、当塾としてイチオシのものを紹介しましょう。
「ガウス平面」あるいは「複素平面」と呼ばれているものです。

これを理解するために、まず、「数」についておさらいしてみましょう。

小学校で最初に習う「数」と言えば、1、2、3…、「自然数」です。
それから「ゼロ」、「小数」や「分数」、「負の数」も登場します。
これらを全部合わせて「有理数」といいます。

有理数とは、分数で表すことのできる数です。

中学3年生で「無理数」が登場します。
たとえば、√2(1.41421356…)や円周率(3.1415926…)のように、

循環する数の並びがまったくなく、分数で表すことができないものをいいます。
今でこそ、無理数は学校で普通に教えられています。

しかし、古代ギリシャの数学専門家集団ピタゴラス教団は、

こんな不可思議な「数」の存在を、どうしても認めることができなかったそうです。
「有理数」と「無理数」を合わせた数が「実数」です。

そして高校では、「虚数」が登場します。これは、二乗してマイナスになる数のことです。
マイナスの数を二乗するとプラスになりますから、普通に考えるとこんな数は存在しません。
しかし、「虚数」を認めなければ、古代のピタゴラス教団のように、

数学はまたひとつの壁に突き当たってしまいます。
二次方程式、三次方程式を解こうとすると

「虚数」が登場してくるのですから。

この「実数」と「虚数」を統一的に表したものが「複素数」です。

ガウスは、おなじみのXY平面の

X軸を「実数軸」、Y軸を「虚数軸」としました。

それによってすべての複素数をこの平面上に表すことが

できるようになったのです。

​正十七角形
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